あるのか、一体どういうメカニズムになっているのか、それは誰にも
わからない。すべてをわかろうとしたってとうてい無理な話だ。
それでも、大事なことは、そこに何があるのかを知ろうとすることだし、
その知ろうとする行為自体に、とても大きな意味があるんじゃないだろうか。
お遍路をすることは、すなわち“ひたすらに歩く”ということ。
ひたすらに歩くのは、すなわち“ひたすらに自分と向き合う”つまり、
自分の宇宙をみつめるため。
このドラマを見ていると、主人公の徳久(江口洋介)とともに、私自身も
また、「自分にとって一番大事なものとは何か?」「自分が一番欲しい
ものは何か?」を考えさせられてしまう。
お遍路の心得の基本は、ともかく「自分にも人にも嘘をつかないこと」
徳久の元上司寺島(三浦友和)の妻靖子(風吹ジュン)は、自分の気持ちを
ストレートに夫に伝えずに、まるで相手を試すように、その気があった
わけではないのに「離婚」を口にして半ば“脅し”をかけることで、
自分の望むように夫をしむけようとして、逆に夫から「離婚してもいい」
と告げられ軽いショックを受ける。
徳久はといえば、父親に寺を継ぐと嘘をついたまま、婚約者(戸田菜穂)には
「あれは嘘だから」と言うことで彼女の気持ちをつなぎとめようとして
みるものの、自分がほんとにどうしたいのかがわからないでいる。
みんなそれぞれ、自分に正直になろうともがきながら、ひたすらに
苦しい道程を歩いていく。
基本的には、結構長いセリフのやりとりが多く、たいしてテンポが良いわけ
ではないのに、そのセリフの一つ一つがともかく心に染みてくるもの
ばかりで、ぐいぐいと引きつけられたまま1時間があっという間に終わる
感じだ

このドラマには、「人の業」がめいっぱい詰まっている。夫婦・親子・家族
それらの絆のもとの“業”を、少しづつ開封しながら、旅は続いていく。
その深さと、海風のような爽快さが、なんともいえない魅力のドラマだ。
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視聴率 7.3%
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